総合診療科

診療・各部門

総合診療科とは

あまり聞き慣れない診療科だと思われますが、総合診療科は一般的には『医療における診療科のひとつで、あまりにも専門化・細分化しすぎた現代医療の中で、全人的に人間を捉え、特定の臓器・疾患に限定せず多角的に診療を行う部門』とされています。また、総合診療医(General Practitioner; GP)とは、『病気を心身から全体的に診療する医師である。病気の予防にも携わる。』とされています。

総合診療制度が普及している欧米に比べ、日本では歴史の浅い診療科です。現代の日本の医療は、細分化されすぎた医療、臓器中心の医療、治療することだけが目的の医療、過剰医療等の様々な問題を抱えており、人間を診るより病気を診ることに偏重が生じてきています。その中で人間中心の医療、全人医療への回帰が叫ばれ、総合診療や家庭医療のニーズが高まってきています。

奈良県では、全国に先駆けて1975年に天理よろづ相談所病院で総合診療教育制度(レジデント制度)が導入され、2004年に市立奈良病院で総合診療科(院内標榜)が設置されました。2004年に奈良県立医大に総合診療科が新設され、2022年4月に当院と奈良県総合医療センターにも総合診療科が新設されました。

日本での総合診療医は、大きく家庭医と病院総合医(ホスピタリスト)に分けられることが多いですが、救急医療や医学教育に力を入れている病院もあります。当院では全人医療を核にした家庭医療に重点を置いています。

当院の総合診療科では

当院の総合診療科では、他の病院や近隣の診療所やクリニックから紹介された患者さんの入院診療を中心に、週1日木曜午後の総合診療外来、訪問診療(通院が困難な患者さんの家に伺って自宅で診察や検査を行う在宅医療)等を行っています。

新設されたばかりの診療科で医師も少ないですが、人間をまるごと診るという全人医療を根幹に据えた診療を心がけ、できれば心身共に健康を取り戻し、患者さんやそのご家族にこの病院に来てよかったと喜んでもらえる様に務めたいと思います。

患者さんへ

『これからは根治性(病気を治すこと)だけでなく、患者さんのQOL(生活の質)も考えた診療が要求される時代です。また、患者さんと医者の人間関係でもっとも大切なのはお互いの信頼関係であろうと考えます。』(中略)『また、病気の予防・治療は医者だけが行うものでなく、医師・看護師・コメディカル・患者さんが協力して行うものです。これからは患者さんにもそれらの事をよく理解して頂いた上で、自分でも考え“主役”として積極的に医療に参加する時代と考えます。』

初期研修医や医学部の学生さんへ

今後は奈良県立医科大学総合診療科・天理よろづ相談所病院総合診療部・奈良県総合医療センター総合診療科との交流を通し、いわゆる“総合診療マインド”を持った医師の育成にも力を入れていきたいと思います。

中規模病院でこそ学べる、全人医療・家庭医療・在宅医療(訪問診療)を含んだ総合的な研修を受けたいと思う方は、是非当院での研修についてご連絡の上ご相談下さい。

医師紹介

副院長 岡 裕也  (兼、総合診療科部長)
資格総合診療専門研修特任指導医
日本泌尿器科学会専門医
日本内視鏡外科学会技術認定医
日本泌尿器内視鏡学会腹腔鏡技術認定医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
臨床研修指導医
京都大学医学博士
専門分野総合診療、泌尿器、家庭医療
所属学会等日本プライマリ・ケア連合学会
日本癌学会
日本癌治療学会
日本泌尿器科学会
American Urological Association(AUA)
日本内科学会
日本内視鏡外科学会
日本泌尿器内視鏡学会

私は2006年から5年余り、当院の前身である奈良社会保険病院で泌尿器科部長として勤務しておりました。当時は奈良県で初めて泌尿器科腹腔鏡手術の技術認定医を取得し、専門医としてがん治療を中心に働いていました。上記の文章は当時のホームページに載せていた文ですが、その思いは今も変わっていません。

その後私は地域医療振興協会(JADECOM)に入職し、岐阜県揖斐郡という山奥のへき地診療所で7年間僻地医療(1)を行い、2022年から当院に戻って(2)まいりました。今の日本の医療は倫理的な面でも医療経済的な面でも様々な課題に直面しており、これからは医療を受ける側も行う側も大変な時代です。ただ医療を行う側は、目の前にいる患者さんや家族に誠意を持って接し、その日一日を誠実に診ていくしかない(3)と思います。そのことは、都会でも田舎でも、専門医でも総合診療医でも同じであろうと思います。

(1)岡裕也, 成相通子: “今の医療に疑問”キャリアを捨てへき地医療へ(Vol.2.) 高齢化率52%, 限界集落で診療所長(Vol.3.) 地域医療振興協会の医師再研修プログラム. M3 医療維新. (accessed 2017 Mar 25)

(2)岡裕也: JCHO大和郡山病院(旧 奈良社会保険病院)と私. 奈良県医師新報 2023;857(June):64-67

(3)岡裕也:キャリアを捨てて、へき地医療へ. 菅波祐太.編. オレたちの地域医療Ⅰ-楽しみとその流儀-. 月刊地域医学 2020; 34(6): 443-447